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2015年11月に作成された記事

2015年11月29日 (日)

記憶が無くなること

Anichosinki  私の話になってしまうが、父の後を継いで開業医となり、看護学校と同時にしばらくの間介護福祉学校の講義を行った。介護福祉関係の方々と知り合い、勤務医時代から抱いていた医療と介護の連携を熱く語った記憶がある。同時に介護保険のモデルケースが始まり、医師会から指名を受けて介護認定に関わり、第一回のケアマネージャーの試験を受け資格を取得して理解を深めた。その後も介護認定の仕事を続ける間に、更に介護と深くつながった気がする。今では、地域医療や包括システムなどの仕事を引き受け、在宅医療システムを行政と一緒に構築し、認知症に優しい町作りのために、認知症サポート医の資格を取得した。こうやって考えてみると、在宅医療や介護との連携、そして認知症への関わりは、私の開業医としての路線上、必然的であったかもしれない。

認知症サポート医として、地域の認知症事例検討会を多職種の方と行っている間に、認知症の患者様が増えてきたのは事実である。このため、現在では土曜日に認知症優先外来を行って対応している。
認知症は、単に診断し処方して終わりでは無い。その方の生活状況や生活史、性格や趣味や嗜好などを把握して、ご家族様や介護に関わる方々、そして本人様とタッグを組んで向き合う病気である。決して医師の、或いは家人の満足のために医療を行うのでは無く、その意味でも多職種で連携して支えることが重要である。
しかし、残念ながら診察室に連れてきていただいた多くの認知症患者様は、既にある程度進行されていることが多く、ご本人様から、不安や不満な点、或いはどうしたいなどの希望を聞かせていただくとは難しい。本人様から具体的な意見がお聞きできない以上、我々関係者が本人様にとって良かれと考える対応をしているわけで有り、本当の患者様の声が、それと一致するか否かを確かめる方法がない。20151129
先日、本当に初期の認知症患者様が受診された。と言うよりも相談にみえたのである。高齢の方であるが、本当に記憶障害のみで、それ以外は全て保たれていた。日常のほぼ全てに自立されてはいるが、短期記憶は障害されていると言う状態であった。
私は、初めて生の声として、記憶が消えていく訴えを聞かせていただいた。覚えていられない事実に向き合ったときの不安。それを周囲から指摘されることの辛さ。近所の人や友人との会話を避けるようになった経緯。理解してくれるご家族への感謝など。
この方は老年発症で有り、今後天命を全うされる間、認知症が進行しないように、そして、この方の今の不安をどのように指導、管理させていただけば良いのかを考えていたのであるが、本人様から、こう言われ、私は私の持てる知識と経験を最大限活用してこの人を親身に支えることが、医療という範疇を超えて大切なのだと思っています。
『先生、私の不安を正しく理解していただいた先生を信じています。少しでも進行しないようにお力を貸して下さい』

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