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2016年12月に作成された記事

2016年12月17日 (土)

主治医の前では患者になる医師

Coffee_cap 前回の記事で書いたように、声帯ポリープの手術を全身麻酔で受けた。患者として手術を受けたり、入院する経験は、患者を診る医師としてはとても大切だと思っている。その大切さは後述するとして、まずは、自分の事を書きたい。

『まな板の上の鯉』ではないが、私は整形的な3回の手術時も、痔瘻の手術時も、そして今回の手術時も、主治医に質問したことは一度もない。つまり医師である自分は、どうするのか?どんなリスクがあるのか?鑑別疾患として何があるのか?手術のさまざまな合併症になにがあるのか?などを知っているわけであり、心配すれば事細かく尋ねる知識を持っている。しかしそれを質問したら、主治医はより責任を感じ、萎縮するかもしれない。こんな時、私は絶対に『まな板の上の鯉』になるようにしている。全面的に先生を信用しているから、後は好きにして!!そう言った感じである。
私は外科医ではないが、それでも心臓カテーテル検査やペースメーカーの植え込み術など外科的な処置も多く行ってきた。そんなときに、一番気持ち良く手技や検査・処置が行えた患者様は、全面的に私を信じてくれた方である。『先生にお任せしますから、よろしく!』と言われると一番自分の技量が発揮できていた気がする。逆に事前に、あれやこれやと疑問や質問を投げかけ、更には不信感がにじんでいる人ほど緊張してしまい、自分の持てる力が十分に発揮しにくかった記憶がある。とは言ってもだから手を抜くとか、だから一所懸命にやると言う意味では無い。
不思議なもので、そうして全面的に信用してくれた人ほど順調で、心配された人ほど予期せぬことが起こりやすい様な気がしている。
つまり、医師である私ではあるが、医療を受けるときは、完全に患者になって主治医に任せている。それは医師である私が、患者様にそうして欲しいからそうするのだとも思う。201612191
で、あれば、絶対に医師は患者の立場を数多く経験すべきである。今回も入院中、何度もそう感じた。特に今回印象に残ったのは、手術の前日に手術室の看護師と麻酔科医がそれぞれ訪問してくれたことだ。向こうも私が医師であることは知っているので、話しにくかったかもしれないが、きちんと全身麻酔の説明やリスク、注意点など話してくれた。知ると逆に不安を抱く人もいるかもしれないが、最後に『十分な対応で最善を尽くしますので、当日は何も心配しないで手術を受けて下さい』と笑顔で言ってくれた。医師としてでは無く、1人の患者として凄く嬉しい一言であり、励まされる一言でもあった。
単に疾患や治療方針、想定されるリスクなどを説明するだけでなく、自分がそのことに精一杯取り組んで治療にあたっている言う、ある意味言い訳がましいと感じていた一言は、治療を受ける側としては言って欲しい一言であったのだと、痛感した今回の入院であった。
(写真は、術後帰室してから下肢静脈血栓症の予防がされていることに気づき、思わず臥位のまま両足を挙上して撮った写真)

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2016年12月13日 (火)

初めての全身麻酔と麻酔の思い出

Coffee_cap 先日、初めて全身麻酔で手術を受けた。と言っても手術時間は15分ほどで、手術室への移動、準備して麻酔の導入、終了後の覚醒までの時間と抜管や帰室の準備で45分。全部で1時間程度である。病名は声帯ポリープ。声帯に小さなできものができて、声が出しにくかったり、声がかすれたりする。

私も医師であるから、耳鼻科の知識も勿論あるが、昔は全身麻酔などせず取り除いていた事もあったようである。とは言え総合的に考えれば全身麻酔で行う方が安心と言えるかもしれない。しかし本人にしてみると、全身麻酔である。完全にその間の記憶もなく、呼吸も止まるのである。不安?と言われれば不安だったかもしれない。
私は手術を4回受けている。右大腿筋断裂手術を23歳脊椎麻酔で、痔瘻の手術を27歳静脈麻酔で、41歳に右脛骨骨折の固定と抜去で二回脊椎麻酔。こう考えると手術の経験は多い方かもしれない。しかし全身麻酔は初めてである。
麻酔には大きな思い出が二つある。一つは痔瘻での静脈麻酔である。『じゃー今から麻酔薬入れていくから、1から順に数えてて!』と言われ『イチ』と声を出すと同時に注入されてきた薬物で全身が虚脱状態になり、『ニイ』と言おうとする自分を意識しつつも声が出せなかった。その時耳は聞こえていたのだが、先生が『早!』って言ったことは忘れ得ない。
41歳での脛骨骨折は、夜に外傷が原因で生じた。当時勤務していた病院の友人である整形外科医が今から手術しましょうと、深夜に行ってくれたのである。腰椎から注入された麻酔薬の影響で徐々に身体の上方まで感覚が無くなり動かせなくなってくる。気づくと胸の辺りまで効いているようだった。思わず友人医師だから『おいおい!効き過ぎてないか!』と言うと、友人医師に『先生・・・やかましい』と諭されてしまった。順調に手術が進むなか、突然友人の整形外科医師が『先生、手術台で、大はしないでよ!』と言ったのだ。下半身どころか胸から下の感覚の無い私は、てっきり大便をしてしまったのだと思い、平謝り。手術室の看護師も全員知り合いだから、『ごめんね・ごめんね』とひたすら謝った。程なく手術が終わり、覆われていた自分の下半身が見える状態に。大便などした雰囲気は無い。と、ニコニコ顔の友人医師が『嘘だよ~』の一言。完全にだまされたのである。20161213zensinmasui
さて、今回の全身麻酔。手術室まで歩いて手術台に乗った自分。準備が済むとマスクで覆われ、『それでは始めますね。ゆっくり呼吸していて下さい。少しお薬入れますので、静脈がしみるかも・・・』と麻酔科医の声。 そして、次に聞こえたのは、同じ麻酔科医の声で、『は-い、お疲れ様でした~無事終わりましたよ』だった。
完全に約半時間俺の記憶は消えている。呼吸が止まっていたことも、人工呼吸器に繫がれていたことも、ましてや、挿管チューブが気管に入っていたこともわからなかった。
医師としてわかっていたことばかりだが、経験すると全く異なっていた気がした。ある意味貴重な体験だった。

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