大江港灯台への道(熊本県)
昨年末クリスマスの時期に、大江港灯台を目指す途中に立ち寄った大江天主堂の記事を載せた。今回は、その目的地である大江港灯台を紹介するつもりだったのだが、思い返すと、灯台までの行程は、語らずにはいられないほど過酷なものだった。夏草に隠された山道、37度の気温、マムシの恐怖など・・・。誰もその行程などに興味が無いのは充分理解しているが、どうしても灯台を紹介する前に、その行程を知っていただきたく、今回紹介させていただくことにした。冬に訪ねれば、何の苦労もなかったであろう猛暑の中の行程を少しでも理解いただけたら嬉しい。
大江港灯台に向かうのは、山歩きとなる。車から出て、既に大江天主堂での滞在だけでも汗だくになったTシャツを脱いだ。まずは首筋を中心に虫除けスプレーを念入りに吹きかけた。そして、これまでさんざん私を悩ましてきたマムシの恐怖にも立ち向かうため、厚めの長ズボンを短パンの上にはいた。後部座席で乾かしてあるTシャツを着て、その上から登山用のレインジャケットを着た。両手には指先が出た皮の手袋をし、その上から軍手をはめ、首にタオルを巻き、帽子をかぶった。飲み物も入れたカメラリュックを背負い、伸縮自在の杖を持って準備完了である。既に汗が噴き出している。
海岸を少し進むと埼の山に登る階段が見えてくる(写真右上)。そこを登ると既に道は存在していなかった。いやあるのだが道ではない(写真左上)。それでも進むべき方向はわかる。延ばした杖は、ヘビの存在を確かめるべく、歩きながら、いや登りながら地面をパンパンと叩くのに使った。もう少し進むと、いよいよ道がない、と言うより草で全く隠れている(写真右二番目)。既に紹介した下大戸ノ鼻灯台でマムシを気にして踏み込むのをためらった草むらより草が茂っている。『なんでこんな所行かなきゃいけないだよ』と自分の愚行に愚痴をこぼしながら、パンパンと叩きながら草むらに入り進んだ。少し進むと木々や竹林で薄暗い場所に出た(写真左二番目)。だが道がはっきりとしていて、草が生えていないだけでも私には平穏な地に思えた。しかしその平穏は長続きしなかった。やがて日射しが頭上に戻ったかと思うと、正面には再び草むらが続いていた(写真右三番目)。しかし、雰囲気は頂上に近い。再びパンパンと地面を叩きながらゆっくりと進んだ。とその時だった。『ガサガサ』と何かが少し前方右側で動いた。驚いて立ち止まった私の目に入ったのは、枯れ枝だけであった。しばらくその場で立ちすくみ、気配を覗ったが、動く物はなかった。数秒の出来事であったのだが、私の汗を確実に冷や汗に変えていた。
草むらを通り過ぎると、再び両側から延びた木々が日射しを遮り、薄暗いトンネルを作っていた。しかし、少し進むと正面に光が見える。そして更に近づくと白い人工物が見えてきた(写真左下)。
灯台に着いたのは、海岸を歩いた時間も入れると、およそ40分ほどである。既にレインジャケットの下は汗だく。地肌が汗でジャケットと引っ付き気持ちが悪いが、ここで脱げば一斉に蚊の攻撃を受ける。結局顔の汗を拭うだけでがまんした。
『大江港燈台』と縦に刻まれた門の名札を、はっきりと読めたことが何故だか無性に嬉しく感じた(写真右下)。
最近のコメント